webclap:ハロウィン ダテサナver.
「おーい、小十郎」
どたどたと足音も高く伊達家当主であるところのお殿様が家臣を呼ばわる。
「小十郎!!」
バタンと大きな音を立てて障子が開け放たれた。
晴れた青空が目に痛いほど。だが、そんなものも目に入る様子もなく、奥庭から繋がる小道に裸足で降り立った。
そこから大きな声で呼ばわると、道の向こうからかすかに応えが返ってくる。
すこしそこで待っていると、ほどなくして手にかごを携えた家臣が姿を見せた。
「政宗様、またそんな格好で」
顔を見るなり小言が出てくる家臣に手を上げて、殿様は仁王立ちのままかごの中を覗き込んだ。
「oh! これこれ。これを待ってたんだ」
殿様は嬉しそうに両手であまるほどの実を手に取った。
「…かぼちゃですか。煮付けでも?」
「ha? 前田慶二じゃあるまいし、煮付けになんかするかよ」
怪訝そうな家臣を尻目に殿様は手にしたかぼちゃを掲げて、ためつすがめつ眺めている。
「ではなにを…?」
「ま、出来てからのお楽しみってな」
じゃあ、もらってくぜ。と殿様はやけに楽しそうな笑みを見せて、かぼちゃを手に走り去っていった。
「いつまでもやんちゃなことで」
家臣はかごを抱えなおして、水場へと向かっていった。
「hey! honey!」
「は、はにぃ?」
殿様が嬉しそうに駆け込んでいくと、部屋の中で書物を読んで待っていた幸村が振り返って微妙な顔をした。
「ほら、幸村。かぼちゃだ」
「…見ればわかるでござるが」
殿様が手に持っていたかぼちゃを幸村の前にドンと置く。
そして、小太刀を手にしてにんまりと笑った。
「外国の風習でな、はろうぃん、と言うものがあるのだそうだ」
「はろ…?」
殿様は楽しそうにざくりとかぼちゃに刃を入れた。
「あ〜、外国の盆だな。死者が還ってくる日なんだとよ」
「なんと。それはまことでござるか」
「ほんとだったら、いまごろこの国は死者で溢れ返ってるな」
さっくりと言って、刃でかぼちゃの中身をくりぬく作業に移った。幸村はその器用な手元を見ながら、ほっと安心したように息をついた。
「そうでござる、な」
辺りを見回すと、のどかな風景が広がっている。ここが死者が溢れかえる風景など想像もつかない。焔で包まれた家屋が焼け落ちる。矢や刀が突き刺さって倒れ付す鎧武者。幸村の脳裏に浮かぶのは戦場の風景だった。
「幸村。俺は死者でも安心して帰ってこれるような平和な時代を造りたい」
ふと、真面目な声が幸村を引き戻す。
「そう、でござるな。そんな世を幸村も見とうございます」
幸村は一心不乱に刃をかぼちゃに向かって振う政宗を見て、微笑んだ。
「おし、できた!」
先ほどまでの真摯なまなざしはどこかへすっ飛ばしたかのような殿様は、心底楽しげに出来上がったかぼちゃの彫り物を両手で掲げてみせた。
「…それはなんでござるか?」
幸村は首をかしげて、中身がと目と鼻がくりぬかれたかぼちゃを見上げた。
「じゃあっく・ざ・らーんたーん!!」
「邪悪ざらーんたーん?」
殿様はちゃららっちゃら〜♪とでも背後になりそうな口調で言い放つ。その横で、幸村のアホっぽい反復が響いた。
「NO!」
「つっ!」
ぺしっと幸村の頭をはたいて、殿様が次に行ったのは、空洞のかぼちゃの中に蝋燭を立てることだった。
「行灯でござるか」
「そうそう」
ぽんと手を打って幸村が言うと、殿様は嬉しそうに笑って火をつけた。
ぽうっと蝋燭に火がともると、暗くなっていた座敷に淡い柔らかな光がこぼれた。
「ほら、見てみな」
殿様の指差す方向に目を向けた幸村は、ずざっと座ったまま後ずさった。
「な、なっ…!」
幸村のおびえた態度に気を良くした殿様は、幸村の肩に手を回して腕の中に抱き込んだ。
「大丈夫だ、さっき彫ったかぼちゃの影だ」
「わ、わかってるでござる!」
くすくすと笑って告げる殿様に、幸村がじたばたと腕の中で暴れだした。
「こら、暴れるな」
わるかった、と笑いの残る声で詫びる政宗に、幸村が暴れる力を緩めた。
「あの灯りが魔を寄せ付けないらしいぜ。魔よけの灯火だ」
幸村を己の胸に寄りかからせたまま、政宗が目を細める。
「これからの乱世にも幸あらんことを」
政宗の言葉に幸村も目を細める。
ぼんやりとした灯りを眺めながら、二人はひと時の穏やかな時間を大事にそっと接吻けた。

end


かぼちゃは緑ですよ、緑(笑)
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