webclap:風邪 ロイエドver.
背中がぞくぞくする。
生身の関節が痛い。
喉がいがらっぽい。
こめかみ辺りもずきずきする。
目蓋が熱っぽい。
どうかんがえても、これは風邪の症状だ。
まいったな。旅している身に体調をくずすことはいろいろな意味で
ロスを示す。
時間、金…。
そして、心も弱る。
アルには気付かれないようにいつもよりも熱い息を吐き出す。
「おや、鋼の」
「あ、大佐。こんにちわ」
オレは、聴こえてきた声にとっさにしかめっ面を作った。アルに、
兄さん、とたしなめられるが、こればかりはしょうがない。
脊髄反射だからな。
不意に、大佐がオレの顔をじっと見つめた。
「な、なんだよ」
たじろいだオレに、大佐が手を伸ばしてきた。
身を引いて避けようとするが、左手で肩を押さえつけられた。
そして、手で払う間もなく、大佐の右手はオレの額に当てられていた。
「………」
そのまま待つこと暫し。大佐は手を離すと、アルに顔を向けた。
「これからの予定は?」
「特には…。ねえ、兄さん」
とまどったような声が、兄さん、のところで力強くなる。
先ほどの大佐の行動の意味を考えて、たどり着いた、そんなところだろう。
ばれちまったか。
オレはため息をついた。
「では、暫く鋼のはこちらで預かることにしようか」
「アルは」
「ボクは大丈夫」
「後で軍部の宿に手配しておくから、司令部に顔を出しなさい」
「ありがとうございます」
そんなやりとりも、オレには遠い場所でのことに思えた。
指摘されたことで、体が風邪を認識してしまったようだ。
本格的に熱が上がっている。
それにしても、なんで大佐にはすぐにばれたんだろう。アルにさえ
気付けなかったのに。
ふらりと傾きそうになった体を大佐が支えた。
「そろそろ限界のようだ。では、失礼」
「よろしくお願いします」
今度はふわりと体が浮いた。
「頼むから暴れないでくれよ、鋼の」
オレの驚きを察したかのように、大佐の声がすぐ近くで聴こえた。
「恥ずかしいなら、フードでも被って顔を隠していたまえ」
コートで包まれるようにして横抱きにされた。
いくら、大佐よりもちい…さいからって、こんな風に抱き上げられ
るほどオレは軽くない、はず。大佐はくさっても軍人、そういうことか。
ぼけーっとそんなことを考えながら、フードを被って、顔を隠す。
暴れる元気はないし、そんな気力もない。
とことんまで弱った心がこの温かさを求めていたらしい。
「私に隠し事など、10年早いな、鋼の」
心地よいゆれと、大佐の落ち着いた心音に頭を摺り寄せると大佐が
微笑った気配がした。
end