5 三日後の結論
どうやらうちの主は、なにかしら結論を出したらしい。
佐助は、ここ三日間の幸村の様子からそう察した。
「で、どうすんの?」
「それを報告に行ってくる」
馬を用意しているところを見ると、どうやら直接乗り込む気らしい。佐助はやれやれ、と天を仰ぐ。
「一人で奥州まで乗り込むつもりかよ。俺も付いていきますからね」
「…わかった。だが、某が出した結論に口をはさむでないぞ。それから、これはお館さまには絶対に言ってはならぬ。今までのことも、これからのことも」
厳しい目を前に向けて、言い放つ幸村に、佐助は軽く目を見開いた。
「このことがお館さまの進攻の妨げになることだけは避けねば」
「あー。はいはい。了解しましたっと」
佐助は、最悪な、でも個人的には嬉しいような、複雑な結果になったのだろうことにこっそりと笑みを浮かべた。
「今夜は向こうに泊まりだろうね。邪魔はしないからさ、旦那」
幸村の肩をぽんとたたいて、佐助は自分の荷物と馬を取りに屋敷の中へ入っていった。
「佐助は妙に勘が良くて助かる」
幸村はたたかれた肩に手を置いて、苦笑ともつかない笑みを浮かべた。
奥州は、既に冬の気配を漂わせている。甲斐ではまだ秋口に差し掛かったところなのに。
「寒いねえ。旦那。ちょっと炎でも出してあっためてくださいよ」
「何を言うか。心頭滅却。こんな寒さ、吹き飛ばせ」
相変わらず無茶言うねえ、と佐助は呟いて肩からかけている布を口元まで引き上げた。
「伊達家のお屋敷はあっち」
ともすれば迷いそうな幸村を誘導している佐助は、少し笑った。
「知らないでどうやって行くつもりだったのよ」
「奥州で聞けばわかるかと思ったのだが」
そんなことでわかるほど、奥州は狭くはないだろう。佐助はついてきて良かったと心から思わずにはいられない。
「ああ、そうそう。旦那訪問の連絡もしてないだろうから、俺様が代わりにしといたからね。そのまま突っ込んだって追い払われるか捕らえられるかのどっちかだろうし」
まあ、その方がよかったのかもしれないけどねー、と気楽に笑う佐助に、幸村は少しだけ気まずそうに顔をしかめた。
しかし、出掛けのあの時間に伝達を出して、この時間に届いているとも思えないが…。
幸村が考えていることなどお見通しとばかりに、佐助はニヤリと笑って
「忍者の伝達能力舐めんなよ」
と、二人の先にある明かりのついた屋敷から人が出てくるのを指さした。
そこには、伊達政宗側近の片倉小十郎が少し驚いたようにたたずんでいた。
独眼の竜の右目とも言われている男だ。幸村はびくっとしたように動きを止めた。
「まさか本当にいるとはな」
「どうもー。うちの旦那が無理言っちゃってすみませんねー」
訝しげな小十郎の声に、佐助が明るく答えた。
「いや、うちの殿からも話は聞いている。こちらこそ、申し訳ない」
再び幸村の肩がびくりと震えた。
「ま、政宗殿はなんと…」
「一応、おおまかなことはすべて」
小十郎がため息をつく。佐助は幸村に向かって肩をすくめて見せた。
「さ、殿がお待ちです。貴方たちのことは、家のものにも伝えてありますので、客人としてもてなしをさせていただく所存であります」
小十郎は改めて礼をして幸村たちを促した。
伊達の屋敷は幸村の住む上田城と大して変わらないほどの広さだった。
「ここは政宗様が好んで使う別宅です。城ではさすがに貴方たちがいたたまれなかろうと」
きょろきょろとしていたのがばれたのだろうか。小十郎が苦笑しながら教えてくれた。
「殿はこちらでお待ちです」
「おおっとー。じゃ、俺様は別室で待たせてもらおうかな」
「そうですか。では、ご案内します。こちらへ」
「じゃあねん。旦那。がんばってね〜」
「さ、さすけ」
幸村のすがるような声もむなしく、佐助は小十郎とともに廊下を先に行ってしまった。
残された幸村は、ここの主がいるという障子と廊下の先を交互に見やった。
「幸村か」
いきなり聞こえた声に、幸村はギクっとしたように障子を見つめた。
「入れよ」
「し、失礼つかまつる」
中から促された声に、幸村は覚悟を決めると大きく息を吸って、障子を開けた。
「よお、あんたから返事をしに来てくれるとは夢にも思わなかったぜ」
障子を開けて目に飛び込んで来たのは、こちらを向いて酒の杯を手にした政宗の姿だった。庭に面した障子は開け放され、冬間近の冷たい空気が部屋を冷やしている。
「さむ、くはないのですか」
幸村が聞くと、政宗は左目にかかる前髪をかきあげて笑った。
「こんなの寒い内に入るかよ。雪が降ったらこんなもんじゃねえぜ、ここいらは」
そう語る政宗は普段から想像もつかないような、穏やかな顔をしていた。
兜を脱いで、一重の着流しを着て、月を愛でながら酒をたしなむ。武将ともなればこれが当たり前なのかもしれない。信玄だってこういう穏やかな時がほとんどだ。
「こっちきな」
政宗はおいてあった杯を手に、幸村を呼んだ。幸村は誘われるまま、政宗の向かいの場に腰を下ろした。
「酒は飲めるだろ? 今日は特別月が綺麗だ。月見酒としゃれ込もうじゃねえか」
杯を手にすると、政宗が自ら酒を注ぐ。それから自分の杯にも注いで、軽くその杯を幸村に掲げた。幸村も会釈とともに杯を上げて、一気に中身を飲み干した。
「お、いけるねえ」
政宗は嬉しそうに言うと、再び酒を杯に注ぎいれる。
こうしていると、戦の最中で出会う伊達政宗とは全くの別人なのではないかという気もしてくる。
「伊達、殿」
「ん? なんだ、ってかその伊達殿ってのはやめろ」
「じゃあ、政宗殿」
「なんだ」
杯を口元に持っていったまま目元で笑う。いつもいつも刀を合わせている時はお互いを食いつくそうかというような気迫がみなぎっている目が、優しい。
「この間の…」
「ああ」
どうだった、と政宗はどこか嬉しそうに問う。幸村は程よく入った酒の勢いも手伝ってか、嬉しそうな政宗に反発心を覚えた。
「政宗殿の思惑通り、某、この三日間政宗殿のことばかりを考えておりました」
「へえ」
「あ、あの接吻けの意味もわからない程、この幸村、子供ではござらん」
幸村が少しむくれたようにまくし立てると、政宗は軽く目を見張った。
「それは悪かったなあ」
くつくつと笑う政宗に、幸村は拗ねたように睨む目を向けた。
「政宗殿は某のことが本気で欲しいと?」
「…ああ」
「伊達軍に欲しいということではなく?」
「ああ」
「政宗殿本人が、真田幸村本人を欲しいと?」
「That's right」
「ざっ…?」
「その通り」
いきなり分からない言葉で話さないで欲しい、と幸村が思ったのは仕方がないことだろう。気を取り直して、幸村が一つ咳払いをした。
「某、その言葉が本気かどうかの区別が付きかねる」
「? どういうことだ?」
「だから、政宗殿が本気だという証拠が欲しいでござる」
幸村が言うと、政宗が驚いたように目を見開く。右目は相変わらず眼帯で隠されてはいたが、独眼の左目が幸村を捕らえていた。
独特の色味と縦に細い瞳孔。幸村とは違う目が、スッと細まる。
「この目が怖くはないか?」
「怖くはないでござる」
「じゃあ…」
政宗は、右目の眼帯に手を掛ける。幸村がじっと見つめる前で、一瞬その手が躊躇したのを幸村は見逃さなかった。
「政宗殿」
「これは伊達家の側近しか見たことのねえ、俺の汚点だ」
政宗は歯を食いしばるように言い切ると、勢い良くその眼帯を取り払った。
幸村はその醜く引きつった痕を見つめた。
「それは」
「幼いときに疱瘡でな」
「そうでござるか」
「俺の汚点はそんなことじゃねえ。これのお陰で、母に捨てられ、弟も斬った」
「……」
「怖いか。醜いか」
政宗は自虐的に笑って、膝の上に置いた右手を白くなるまで握り締めていた。
これを見た母の目に浮かんだ嫌悪の色が幸村の目に見えたら…。
幸村はそんな政宗を見て、膝を進める。それから眼帯を握りしめたままの右手にそっと己の左手を重ねた。
「怖くはござらん。醜いとも思わないでござる」
「それは、本心か」
政宗は伏せていた顔を上げて幸村を見上げる。幸村が目を合わせるように政宗を覗き込んでいた。その目は、戦場で見る炎の宿ったものではなく、水面のように穏やかな色をたたえていた。
「この痕は、政宗殿とともにずっと在ったものでござろう。眼帯に隠されてはいても、政宗殿の悲しみを見て、苦しみを知っているもの。外の世界は左目で見て、内側の世界はこの右目が見てきたのだと某は思う」
幸村はそのまま右目の傷に唇をつけた。癒すように。その一瞬、政宗はびくりと体を震わせた。
「ゆき、むら」
政宗が感極まったかのように幸村の腰を引き寄せる。すがりつくような政宗の頭を抱きしめた。
「真田幸村、伊達政宗殿の物になるのはかまわないでござるよ」
ささやけば、腰に回った腕の力が痛いほど込められた。
政宗の髪をすくように指を動かしながら、幸村は愛情の足りない子供のようだ、と思った。
「政宗殿は、どうして某が欲しいと…?」
幸村がそっと尋ねると、少しだけ腕の力が緩んだ。
「戦場であんたを見かけて、炎に魅せられちまったのかな。ただ、欲しいと思った」
政宗が顔を上げた。それを言うならこちらだって同じかもしれない。戦場の稲妻と眼光。それを独り占めしてみたい。そう思ったのは事実だった。
「某を手に入れても…。戦場で出会ったなら…」
「ああ。思う存分闘りあおうぜ」
「それを聞いて安心でござる」
眼を合わせて、きっぱりと言い切る政宗に、幸村は微笑む。
政宗が幸村を引き寄せた。抗う様子も見せずに、政宗の手の中に落ちていく。
はじめから噛み付くように口付けられて、幸村の呼吸が乱れた。
「っ…は…」
政宗の頭を抱きこむようにして、舌を絡める。
それだけで幸村の頭は、政宗で占められていく。
「…さ、む…ね…どの」
口付けの合間にささやけば、政宗の手が優しく幸村の背中をなでた。髪をたどるように下りていきそのまま帯の結び目を解く。
舌先だけで幸村の舌を舐めながら、政宗は幸村の胸元のあわせをはだけた。
「…ふ…」
外気の冷たさに、幸村の肌が震える。その肌を温めるように手のひらを這わせた。
そして、首筋に唇を落とす。
引き締まった筋肉が、無駄なく幸村の体にはついていた。あの二槍を軽々と振り回している体は間近で見ても綺麗だった。傷痕はたくさんあるが、日に焼けた肌につきすぎていない筋肉の動きが綺麗だった。
「どう、したでござる、か」
動きを止めた政宗を、幸村が不思議そうに見下ろしていた。
「いや、なんでもねえ」
政宗はいつしか観察するかのように幸村の体を見ていたのに気づき、苦笑する。
胸元に息がかかるのがくすぐったいのか、幸村がわずかに身じろいだ。
逃げようとする体を引き寄せて、胸の飾りに舌を這わせると、首に回っていた腕に力がこもった。
「っ…」
押しつぶすように舌を使って弄くっていると、幸村の身じろぎが大きくなった。徐々に、堪えきれない声が甘く混じってくる。政宗は、その変化に自分も熱くなってくるのを感じた。
はだけた着物から素肌の背中に回した手で、幸村の長い髪を梳いた。短いところは固いが、背中に垂らした長い髪の手触りは驚くほど柔らかい。もしかしたらつけ毛か? などと思ってしまうほどに。
「お前の髪は気持ちいいな」
「な…」
胸を散々弄くられて、呼吸が整わない。言葉にならない声だけが漏れて、幸村は唇を噛んだ。
そのまま髪に沿って指を滑らせて、幸村の下穿きを取り去った。
「っ…! っさむねどのっ!」
あわてたように幸村が政宗の髪を引っ張った。
「ん? ここまできて往生際がわりいぜ。幸村」
覚悟はしてきたつもりだったが、実際にすべてを取り払われてしまうとやはり覚悟が足りなかったのかもしれないと思い知らされた。
戦場とは違う緊張が全身を支配する。
「お前は俺のものになるって言ったんだ」
「そ、そうでござるが…」
「もうなに言ってもやめねえよ。俺はお前が欲しいんだ」
政宗が見上げて、にやりと笑った。
「んんっ…!」
いきなり政宗が幸村の熱を擦り上げた。幸村は前にのめるようにして政宗の頭を抱え込む。
抱え込まれたまま、舌での愛撫を再開すると、幸村の体がびくんと跳ねた。
ゆっくりと幸村の熱を煽ると、冷たい空気に支配された部屋に荒い息遣いと濡れた音だけが響く。
聴覚にも煽られて、幸村の膝が震えた。政宗の腕が腰を支えていなければ座り込んでしまったかもしれない。
「ふ…ぁっ…」
政宗の指は、撫でるように緩慢な刺激だけを幸村に与える。幸村の中心に炎が燻っている。もっと刺激が欲しい。早く燃え尽きたい。
「政宗殿…」
幸村はじりじりとした熱をどうにかしたいと、自分の熱ごと政宗の手を握った。
「積極的じゃねえか」
「んっ…ま…さむね、どのが…」
悪い、と少しだけ涙目になって訴えた幸村に、政宗の熱が一気に煽られた。
「ちっ」
政宗は舌打ちをして、幸村の腰を抱えて押し倒した。幸村は畳の上から政宗を驚いたように見上げた。
政宗はその目を覗き込んで、幸村に掴まれたままの手を性急に動かした。
「あっ!」
幸村は目を見開く。燻っていた熱が急激に温度を上げた。悲鳴のような声を上げて、必死に政宗にしがみつく。政宗が噛み付くように接吻けると、幸村は政宗の手の中に熱を放った。
「っ…はっ」
息が整わないまま、政宗に深く接吻けられて幸村は軽く酸欠状態に陥っていた。頭が霞がかったようにぼうっとする。必死で政宗の舌の動きに付いていこうとするが、苦しさに喘いでいるだけのようにも思える。
「わりぃ…余裕、無くなった」
政宗の両目が前髪に隠されている。ぎりっと噛み締められた口元が、その余裕の無さをあらわしているようで、幸村は少しだけ嬉しくなった。
「そ、れがしも…」
早く、欲しい、と熱に浮かされたように幸村が綻んだ唇に乗せた。
「それ以上、煽るな」
「っあ!」
政宗が苦笑したように前髪の隙間から幸村を見つめて、濡れた指を後孔に埋めた。幸村の背がしなる。
しなやかな筋肉が付いた脚が、畳を蹴るように跳ねた。
痛みのためか、背中をしならせて逃げるように引ける腰を押さえて拡げるように中で指を曲げた。
「うあっ…!」
幸村の中で指がうごめくたびに政宗の着物を掴む指に力が入った。
「もうちょい、我慢しろ」
優しく言いながらも指の動きは性急だった。
早く中に入りたくて、少しだけ無理やり二本目を突っ込む。押し拡げられる感覚に、幸村は目を見開いて政宗にしがみついた。
「い…た…」
刀で斬られるのとは違う鈍いような鋭いような痛み。いままで味わったことのない痛みに、幸村の目に涙がにじむ。
「いてぇか。でも慣らさなきゃ、どっちも辛いからな」
政宗の言葉に、幸村は分かってるとばかりに指に力を込めてうなずいた。
「だい、じょうぶ…でござる…」
震える体を懸命に堪えているのを見て、政宗は幸村に聞こえないように舌打ちした。
優しくするつもりだった。けど、想像と現実はあまりにも違った。
もっと抵抗されるかと思った。途中で拒絶の目を向けられると思った。
手に入れたいものはことごとく、すんなりと手に入ったことのない政宗にはそんな想像しかできなかった。
なのに、現実は…。
幸村は自分の下で、乱れて、あまつさえ欲しいとまで言ってのけた。
優しくしたい気持ちはあっても、凶暴なまでの欲がそれを許さない。
欲しい。早く、欲しい。すべて欲しい。
貪欲な己の心が幸村の体を貪りつくそうと蠢く。
幸村を見る目が戦場の時のそれに変わりつつあるのを自覚した。
「限界だ、幸村」
幸村が政宗の気配の変化を感じ取った。熱い欲が冷たいまでの熱にまで高まる。
「うああっ!」
目を見ようとしたところで、政宗が幸村の中に押し入った。幸村の背が反った。
指で与えられていた熱なんて非ではなかった。足を抱え上げられ、徐々に、でも確実に押し入ってくる政宗の欲が、幸村の頭を白くする。
苦痛の悲鳴が幸村の喉を突いた。
政宗はそれでももう止めることはできなかった。幸村が指が白くなるほどに政宗の肩を強く掴む。
のしかかるようにして奥まで貫くと、幸村の喉が仰け反って、つま先が空を掻いた。
政宗はすべてを受け入れた幸村の頬に左手を当てる。辛そうに眉根を寄せていた幸村はうっすらと目を開いた。その目には涙が溢れている。それを舐め取って、そのまま深く接吻けた。
「う…ん…!」
政宗とつながったまま接吻けを受けていると、そのまま溶けてしまうのではないかと思った。幸村は、目を開けて、政宗の視線を受け止める。
戦場と見紛う程に鋭い視線が、幸村を射抜いた。
――ああ、この目だ。
幸村は微笑んで見上げた。
「…その、目…」
政宗がハッとしたように視線をずらした。幸村は政宗の頬に両手を当てて自分に向かせると、右目に接吻ける。左の目蓋にも同じように接吻けて、政宗の首に腕を回した。
「そ、れがしは、その目に、囚われたので、ござる、よ…」
耳元で囁けば、それが政宗の熱を煽った。
「爪を立ててもいい。俺に傷を寄こせ、幸村」
政宗も幸村の耳元で押し殺した囁きを残す。
それから二人は貪るように戦場で味わう熱とは違う熱を分け合った。
熱の余韻は中々引くものではなく、幸村はいつの間にか移動していた布団の上で荒い息をついていた。
隣でひじを枕にしてこちらをのぞきこんでいる政宗を軽く睨んだ。
「おっと。そんなに睨むなよ。俺もやりすぎたと反省してるところだ」
「…うそでござろう」
ちっとも悪びれていない政宗に、幸村が恨みがましい目を向ける。
「これでは帰れないでござる…」
腰の痛みはずきずきと悲鳴を上げているようだ。こんな状態で馬になんてとても乗れやしないだろう。
「しばらく戦はないはずだぜ。これからは雪が降るからな」
「それは雪の深い国だけの話でござろう。西国より南ではそんなことは関係ないのでござる」
「は。それもそうだ」
政宗は笑って幸村の髪を捕まえて接吻ける。
「まあ、二三日はこっちにいればいいさ。あの忍びだけ帰ってもらえばいい」
「佐助のことでござるか」
幸村はすっかり忘れていたというように瞬く。政宗は煙草盆を引き寄せて笑った。
「何て説明させればいいのでござろうな」
「伊達の嫁になった、とでも言えばいい」
「なっ」
そんなこと言えるはずはない。幸村は煙管に火を入れている政宗を睨んで、赤くなった頬を隠すように顔を伏せた。
「俺がなんか適当に書状を書いてやるよ」
「余計な事は伝えないでいいでござるからな」
戦がやりにくくなるようなことは。幸村がふてくされたように言うと、政宗はわかってる、とすました顔で答えた。
「あんたとはまだまだ闘りあいたいからな」
その言葉に、幸村は満足げに頷いた。
政宗のものになっても闘える。その自信が不動のものになったことに幸村は安心を覚えた。もし、明日伊達軍と武田軍が争うようなことになったとしても…。きっと命を掛けた勝負をすることができる。それは至上の喜び。
「政宗殿。これからも勝負、でござるな」
政宗はしょうがねえ戦馬鹿だ、と呟いて、幸村に軽く接吻けてやった。
――幸村を射止めた矢は、放たれることもなくその身に溶けこんだ。
この矢が解き放たれる瞬間《とき》、それは、お互いのどちらかの命が終わる瞬間《とき》。
そんな予感がした。
end
お、おわった…。
エロって難しい。
てかありがちな話で申し訳なし。
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